安藤美姫選手を応援したくなった話

何やら世間が大騒ぎしているフィギュアスケートの安藤美姫選手の出産のニュース。

僕は人の生き方に対して軽々しくあーだこーだ言う人が大嫌いなので、この手の話題はなるべく見ないようにスルーしてたけど、今日の某ゴシップ専門紙の信じられないアンケートはあまりに酷すぎて、さすがに憤ったお昼過ぎでありました。

 

週刊文春、安藤選手の出産に関するアンケートを中止 – 朝日新聞デジタル

 

「お前らに言われる筋合いがどこにあるんだ!?人の生き方に難癖つけてしたり顔とかホント暇だな!」

と軽く怒りをぶちまけたところで、それだとあまりにもおとなげないので、なんでこんなに嫌なのか自分なりに考えてみた。結論としては、人の「決断」を軽々しく蔑視する態度が失礼すぎて気に食わないんだろうと思った。

決断って言葉は重めだけど、人は日々決断を下しながら生きてるよね。例えばランチは何を食べるかとか。風呂に入るかシャワーで済ませるかとか。当然その決断に至るまでの脳内での「作業」があって、ランチのような気軽なものだったら意識せずに一瞬で終わるかもしれないが、それが人生を左右するようなケースの場合、かなりの時間と精神力を必要とするのは言うまでもない。

自分に関して言えば、3年前に会社を辞めてフリーランスになる時がそうだった。辞めてフリーランスになることはほぼ決めていたものの、一歩踏み出すためには、それなりの思考の時間が必要だった。自分の能力や弱点や、それに対するあらゆる可能性とリスクを考えつつ、自分が今ベストと思っている行動が進みたい道に合致しているかなど…。

要するに真剣に「自問自答」する時間がある程度必要で、理論武装ならぬ、「思考武装」が必要だった。それは他人を説得するためではなく、自分を納得させるためね。最終的には「ここまで考えたんだから実際やってダメだったらもうしょうがない」という開き直りに似たゴール(?)にたどり着く。

そして、よし行ける!ていうかもう行く!行くしかない!となって会社に辞意を伝えた。

そこからが今回の安藤さんには及ばないにせよ、ちょっと大変だった。
やっぱり言われるのよ、いろいろ。

親切心で心配してくる声もあれば、陰口のように伝わってくる声もあった。

フリーランスを経験したことない人から「フリーの世界は厳しい」とか言われたり、「妻子がいるのに」みたいな説教っぽいものや、「まだ会社で学ぶことがあるんじゃないか」とか、「アイツは何も考えてない、甘い」&「世間をわかってない」みたいな人生や世間をよくわかっていらっしゃる(らしい)サラリーマンの方の陰口とか。

いいと思うよ、そういうことを思うのは。でもそれを僕の耳に入る形で言わないでほしかった。

例え親切心で助言してくれたとしても、「あのねーそんなのもう十分考えてるよ…」という感じでうんざりしちゃうのがオチ。自分を納得させるまでに費やした思考の時間を「厚み」だとすれば、ちょっと考えればすぐ思い浮かぶようなリスクなんて本当に薄っぺらで、相手にならないのだ。

 

そして話を安藤選手に戻すと、もう彼女の場合、出産やオリンピックに挑戦するか否かという大きすぎる決断と、それをメディアによって世間に晒されるプレッシャーは、普通の人では想像できない程だっただろう。その中で重ねられた決断するための思考の時間は膨大だったに違いない。

その「決断」に対して、軽々しく意見を言うなんて恐れ多いことは僕にはできない。失礼だし、詳しく知りもしない「事情」に対して予測だけで批判したりするのは「愚の骨頂」というやつだろう。思考武装した分厚い鎧に、ゴム鉄砲で攻撃してしたり顔してるような滑稽さを感じる。しかも撃ってる人たちはそれに気づいていないというカッコ悪さ。

彼女の出産に対して支持するか?というようなアンケートを作るのは論外だし、彼女の決断に関してあーだこーだ言ってる人は、多分人生で大きな決断をしたことがあまりなく、親や世間の言われるままに生きてきてしまった人ではないだろうか。「あついは何も考えてない」という言葉はたいてい、何も考えないで生きてきた人間が言う言葉だ。

「やりたいことをやって生きる」とは、一見楽しそうだし、まあ実際楽しくもあるけど、それと引き換えにしんどい部分も多々あって、その中に「決断」の作業が当然含まれる。周りからの風当たりや、自分の中の不安との戦いも必ずあるから、それに負けないだけの思考武装はなかなか大変で、不満があるにも関わらず現状を変える勇気が持てず、居酒屋で愚痴ばかりこぼしているような人にはわからない世界だろう。現状を変えない選択もアリだが、愚痴や悪口は居酒屋だけにしてほしい。

 

正直スケートはあまり見ないので、安藤選手のことはよく知らなかったのだけど、今回の安藤選手の決断と挑戦を心より応援したくなった。シングルマザーだろうが子育てなんていくらでもやりようはあるし、オリンピックに出る出ないなんて関係ない。とにかく自分が納得いくまでやりぬいてほしいね。人生は自分が納得するかどうかが全てだから。

スケートも子育てもがんばれ安藤美姫!

 

おしまい。

 

【追記】
↓小田嶋隆さんが最高にわかりやすい解説書いてた。
姫は城を出て母になる:日経ビジネスオンライン