個展を終えて

銀座のGallery Art Pointにて個展を開催した。

今回は数字にまつわる作品をピックして展示するので、「427展」というタイトルにしたが、正直にいえば僕の誕生日が4月27日で、会期がその日とかぶるというのが大きな理由だったりする。僕は数字というものの機能や存在に対して並並ならぬ関心や執着があり(だからといって数学が得意なわけではない)、好きな作品を集めると数字入りのものばかりになってしまうというのはここだけの話である。

■カフェ・コムロヨウスケへようこそ

アートの展示というのは、作家本人がいることは意外に少なく、たいてい作品を一人で静かに眺めて帰るという形だけれども、せっかく自分の個展なのだから、せめて来てくれた人にはコーヒーの一杯でも出すような気持ちで話がしたかった。いってみれば小さなカフェの店主にでもなった気分である。

静かにコーヒーが飲みたい人はそうすればいいし、話したい人はいくらでも相手になりますよ、という感じだろうか。僕の作品のコンセプトがいささか難解なことは自覚しているが、その概念は必ず日常の生活や普遍的な物事と繋がっているので、複数の側面から説明しつつ、考えのキャッチボールをできるのが理想だった。

というのもアート活動を始める前の僕のアート界に対するイメージといえば「内にこもって難しい話を難しい顔して話してる人たち」という感じだったし、現在の日本のアート界の立ち位置をみれば、その手の閉鎖性は厳然としてあるように思うので、それを少しでも払拭し、風穴を開けるような空間を作れればと思った次第。いわゆる僕的な「おもてなし」である。

■おもてなされたのはどっちなのか問題

そんな感じで毎日在廊して、アートの話にとどまらず、時事ネタから人生論、下世話な話まで、知人・初対面関係なく話せて、自分的にはうまくいった気がしているけれど、終わった今考えてみるとおもてなされたのは実は僕だったんじゃないかと思わなくもない。

僕が話せば話すほど、共感してくれた方々は新たな側面の意見やアイデアを話してくれ、僕のほうが納得させられることが多かったのだ。なので実はお茶を出されたのは僕なのではないかと…。そんな意味で僕にとって「おいしかった」個展だったように思う。

■情報の交差点を目指して

アートに限らず何事も抽象度を上げれば「情報体」となり、優れた「情報」は新たな情報を生み出すと僕は思っている(生きるとは情報を作ること)。よって僕の活動も、宇宙に少しでも影響を及ぼし、新しい情報を生むことが目標なのは言うまでもない。

今回の個展で楽しいとか面白いと感じていただけたら本望だ。逆につまらないとか同意できないと思われていたら、申し訳なく思うけれども、それも悪いことではない。それを元に新たなアウトプット(情報)を作り出すきっかけができれば、僕の役目は果たされているし、何より僕が次作ろうと思ってるものも大方固まったので、けっきょく個展というのは、人のために頑張ると思いつつも、最終的には自分のためという自給自足のものなのではないかと思わなくもない。来てくれた方、さらに作品を購入してくれた方々には感謝しかないし、作り手と受け手という立場を超えて、今後も相互に影響を与え合える存在でいられれば嬉しく思う。

今回の会期中についに40歳という大台に乗ってしまったのもあり、いい意味で「区切り」ができた個展だったように思う。次はもう少し大きな影響を与えられるよう頑張る次第である。

 

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