台北でのアートフェアを終えて思ったこと

Independent台北というアートフェアに参加するために、台湾に行ってきた。

日本以外のアジアの国で出展するのは初めてなので、どんな感じなるか気になっていたけど、蓋を開けてみれば予想以上の大盛況。アート活動をする上で、アジアの可能性を痛いほど感じた3日間だった。

それと同時に、台湾の「外国感」のなさもなかなか印象的だった。台北の街は日本並みに発展しているし、交通の便もよく、コンビニもあれば、日本の大手チェーン店もだいたい進出している。さらに文化や考え方も共有しているので、言語を除けば、日常で戸惑うようなことはほとんどないのが台湾の特徴だろう。

このようなフラットな世界に触れるたびに、比較対象としていつも思い出すのが15年前の海外での光景だ。僕は学生の頃から外国に滞在する機会が多く、アメリカには3〜4年ほど住んでいたが、その頃(20世紀末から21世紀初頭にかけて)は、海外で出会う日本人以外の東アジア人はみんな「外国人」だった。

人種的な外見は同じとはいえ、ファッションや髪型はその国独特なものがあり、総合的な「雰囲気」で、日本人ではないことが容易にわかったものだ。それぞれの国でそれぞれの流行があって、それぞれの国独自のコンテンツを見て育ち、それぞれ考え方も違っていた。なので同じ東アジア人といえども、互いに「異国感」があったし、その違いを知ることも面白かった。

それが今はどうだろう。僕が滞在したホテルの近くにはユニクロもあればH&Mもある。街も人も一見すれば東京と大差なく、日本人と同じような服を着て、日本人と同じようにスマホを眺めながら地下鉄に乗っている。そして楽しんでいるコンテンツもピコ太郎だったりするわけだ。ちなみにホテルのテレビでは「逃げ恥」がやっていた。

日本で「田舎者」という言葉が、物理的な外面から、内面的な思想を批判する言葉へ変化したように、東アジアで「外国」という概念が、外面的には急激に希薄化している過程にいることを、台北の街はけっこう如実に示しているように思えた。

歴史的ないざこざはあるにせよ、このフラットになった世界で、東アジアは一つのユニットのように協力し合えるんじゃないだろうか、というのが今回のイベントで強く感じたことだ。イベント中に台湾や中国のアーティストと話してみて、みな双方の国に活動の領域を広げたいと思っていることは一緒だった。

僕らはお互いの距離が近く、なおかつ「似ている」。東アジアの国同士は何かと仲違いしがちだが、僕は兄弟喧嘩的な心情が要因として多く含まれているように思う。仮に先の大戦がなかったとしても、隣同士で似ているがゆえ、何かにつけいがみ合っているだろうし、これは今後も続くだろう。

しかし裏を返せば、似ているがゆえに分かり合うのも容易で、政治的や経済的な対立など華麗にスルーして友達になれてしまうのも東アジア人だったりするのは、アメリカのような国に住むと実感するものだ。

ということで政治的な「言語」ではいつも喧嘩になってしまう国同士でも、それ以外の分野、僕ら場合はアートという「言語」ならすぐに仲良くなれる。今回は初めてのアジアの展示だったので、様子見的な感じで終わってしまったが、これで終わらずアートでアジア交流的なことができたらいいと思う。ていうかそうしていこうと思う。

特に台北はとてもいい街で大変気に入ったので、アート以外でもまた来たい。

 

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