ジブリと人工知能と、オススメの本

ジブリの宮崎駿監督に関する番組がNHKで放映されたらしく、こんなシーンがあったらしいです。

宮崎駿監督、ドワンゴ川上量生会長を一喝「生命に対する侮辱」

人口知能(AI)によって描かれた人体の映像を、ドワンゴの川上会長が紹介したところ、宮崎監督は「生命に対する侮辱を感じる」と強い表現で嫌悪感を示したらしいんですね。

このシーンをめぐるネット上の反応を眺めていたのですが、やはり宮崎監督を賞賛しつつ、人口知能に携わるドワンゴ側を責める内容を多く目にしました。これは僕の予想ですが、おそらく宮崎監督の生命に対する愛情に対して、機械のことばかり考えている「生命の奥深さをわかっていない」浅はかな技術者・研究者という構図なのでしょう。

ただ僕としては、宮崎監督はイズムとしてあの反応をしただけであって、それと二項対立かのようにAIはダメだという話にまとめてしまうのは、それこそ浅はかなのではないかと思いますし、そんな二項対立の構図こそ、宮崎監督が避けてきた思想なのではないかと思ったりもします。

というのも、AIに関する本を数冊読んできましたが、人口知能とは、文字通り知能をマシーン上に再現しようとする試みであり、そのためには「人間とは何か」という問いとは切っても切れない関係であるわけで、研究者は普通の人以上に、人間や生命について真摯に考えていることは本を読めばわかります。

ゆえに宮崎監督の人間観、生命に対する哲学は素晴らしく、それゆえに数多くの名作が生まれたわけですが、人口知能研究者による科学的な側面から考察された「人間学」も、多くの示唆に富んだものであることは記しておきたいですし、本来その二つは切り口が違うだけで、向いている先は同じであるはずです。

まああのシーンに関する僕の意見はこのくらいにして、今回はそんな人口知能に関してとても面白い本を見つけたので紹介したいです。今までAIに関する本はいくつか読んできましたが、その中でも抜群に面白かったです。

よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ

あの問題のシーンで、宮崎監督に川上会長と一緒に怒られていた、UEI清水亮さんによる、AIの第一線で活躍している方々との対談本です。日本のAI界の今を幅広く網羅しており、素人でもわかりやすいですし、何より意識や自由意志の問題、さらにホルモンと脳との関係など、機械の本でありながら、実に興味深く「人間」について考察を深めることができます。

最近になってやっとAIに関する言説を多く目にするようになり、車の自動運転やAIによって雇用が奪われる等々、世間でも話題になってきました。しかしこれからAIによって起こされる変化はそんなものではありません。今まで人類が築き上げてきた「人間」の定義を書き換えるような大きなパラダイムの転換が起こることはほぼ間違いないでしょう。そしてそれは何十年後の話ではなく、もうすでに始まっている、現在進行形の世界を僕らは生きているわけです。

なのでAIに関する知識は、現代人には必須だと常々思っているのですが、やっと人に薦められるような本を見つけまして、今回の記事を書いた次第です。

宮崎監督による、人間や生命に対する愛情は素晴らしいです。しかし僕らはAIが人智を超える時代の「人間」についても、考えのコマを進めていかなければなりません。そしてこの大きな変化の時代に備える必要があるのです。特に子どもがいる人はAIの概要だけでも知っておいたほうがいいですね。彼らの生きる社会は、僕らの知っている社会の延長線上にある世界ではないという認識くらいは最低限持っておいたほうがいいでしょう。

最後に、あのシーンについて、川上会長(らしき人)が書いたと思われる匿名ブログがありましたので、紹介して終わろうかと思います。

めっちゃ怒られているのがテレビで放送されてしまった 

 

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